君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
次の日。
ジゼルが目を覚ますと、ユリウスの姿はもうなかった。
いつもと同じような一人での目覚めに昨日のことが夢だったのかと思ったが、
自室ではなくユリウスの部屋なのでやはり現実だと思い直す。

夜が明けても昨日のユリウスの発言や、ルイーザとの噂が頭から離れない。
ブルブルっと頭を振る。
(考えたって仕方ない。離婚されたって行く場所がないんだから。文句を言わず、私は私の役割を果たすだけ。)

昨日持ってきたガウンを羽織って廊下に出ると、
クララが既に控えていた。
「おはようございます、王妃様。お早いお目覚めですね。」
「クララ、おはよう。あなたこそいつからそこに?」
「騎士団の朝練に陛下がお見えでして。王妃様のことゆっくり寝かせてほしいとおっしゃられていたので、私も少し遅めに来たんです。ですからそんなに待っていませんよ。」

クララに自室まで送ってもらうと、
ハンナたちが満面の笑みで迎えてくれた。
その笑みを見ると、ジゼルは少し心が軽くなった気がした。
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