新そよ風に乗って 〜焦心〜
「そうでしょうか?」
そう言われても、半信半疑で顔をあげた
「だってそうだろう? 明日、お前が名倉部長に何を話すのか? それで、どこまで話がいってしまうのか? 勿論、上司の総務部長に伝わることぐらい承知の上だと思うが、それがどこまで伝わるかってことが未知数だから、あいつはもっと恐怖心でいっぱいだと思う」
査問委員会……。
これからどうなるのかなんて、今の私には想像すら出来ない。
「よく頑張った」
高橋さんは、私の頭を撫でてくれた。
こうしていると、不思議なぐらい安心する。
「さあ、もう遅いから部屋入れ。風邪ひくぞ」
胸がいっぱいになって、返事が出来ない。
今、高橋さんに突き放されたら、私はきっと生きていけない気がする。
高橋さんに背中を押されて一緒に部屋に入ると、ゲストルームのドアを開けて私をベッドまで連れて行ってくれると、ベッドの片側だけ捲れかけた布団を全部捲り、私の両肩を押してベッドに座らせた。
「ほら、寝て」
「はい……」
言われるままベッドに横になると、高橋さんが布団を掛けてくれた。
「おやすみ。いい子に」
高橋さんの左手が、私のおでこから右頬にかけて静かに触れると、立ち上がって部屋を出て行こうとした。
頬を触れられたことに、今頃ドキドキしている。
「おやすみなさい……」
寝ながらその背中に向かって声を掛けると、高橋さんが閉めかけたドアノブを持ちながら振り返った。
その背中からリビングの明かりが射しているが、暗くて表情まではよく読み取れない。すると、高橋さんが持っていたドアノブから手を離し、もう1度こちらに向かって来た。
エッ……。
何?
「お前が眠るまで、此処に居てやるから」
「えっ?」
予期せぬ言葉に、驚いて目を見開きながら高橋さんを見た。
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