新そよ風に乗って 〜焦心〜
部屋も気持ちも入れ替えるために、断捨離をしよう。そして、来週からは心機一転、また頑張ろう。そう言い聞かせて、10秒以内に判断して要らないものを思い切ってどんどん捨てていく。決断力に欠けるところがあるので、この方法がいいと雑誌で読んだことがあった。そして、最後にベッドの脇の棚の整理を始めた時、ふと手が止まってしまった。
これ……。
ベッドに座って、握っていた右手をそっと広げると、西日に照らされて綺麗なオレンジ色の液体の入ったガラスの小瓶が光っていた。
『Citrus Ginger?』
『お前が、知りたがっていた香りだろう?』
『えっ? も、もしかして、高橋さんの香りですか?』
『俺の香り?』
『あ、ああ、あの……その……うわあ。でも嬉しいです。ありがとうございます』
『フッ……。忙しい奴だな』
高橋さんの香り。
高橋さん……あの時……。
ギュッと握ると、ガラス瓶のひんやりとした感触が掌に伝わる。
部屋も気持ちも入れ替えるためにも、これはもう……。
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