甘すぎる小悪魔に見つかったなら。
「と,十和……?」



十和は私が声をかけると,いたずらに笑って。

私の手の甲を,口元に引き寄せる。

キスと呼んで良いのかも分からない。

十和は一切表情の動かさずに,ただ私の手を当てた。

柔らかい感触だけが伝わってくる。



「……ふは,顔真っ赤。いいの? 怒らなくて」

「怒ってるよ!」



いくらなんでも,あざとい。

言い換えるなら,小悪魔的で……

急に変なことしないでよ,十和。



「やっぱりちょろいね,あゆ」

「なっ」



それ今地雷なんだって! 知ってて……!!



「ちょろくて……可愛い」



な……今,かわい……?!?!

何を言って……



「おれだけにちょろい,あゆでいて」



それだけ言うと,私の手を繋ぎ直して。

顔の前に置きながら,勝手に私の膝を借りる十和。

今,おれって,言った……?

一人称も,ずっと変えたかったんだろうか。

ちょろくいてって,どういう意味……?

十和,だけに?

意味深な言葉に,私は振り回される。

溢れるまま声にならない文句を口にしようとすると,すぅと息が聞こえた。

うそ,え?

ウソでしょ? はや……

膝の上に,手を握りしめたまま目を閉じる十和。

今,何秒だった……?

違う,私! そうじゃなくて。



「ちょっと,十和?」



頬をくすぐってみる。

と,十和の目元が少し震えた気がした。

声をかけても返答はなくて,やっぱり寝てるのかなと思う。
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