スキがない総長の大胆な溺愛
「……俺の用事が終わったら、蒼羽を病院に連れて行ってあげる」

「はい、ありがとう…ございますっ」

「うん」



最後にニコリと笑って、春風さんはマフラーの人を追いかける。

春風さんの後ろ姿に深くお辞儀をした私は、廃墟の中に足を踏み入れた。

その時、二人がこんな会話をしているとも知らずに。



「…いいのか?」

「夜野に任せておけば大丈夫だ」



「いや、そうじゃなくて。夜野を一刻も早く病院に連れて行った方がいいんじゃないかって事」

「……」



マフラーの人が言った言葉に、春風さんはしばらく黙る。

だけど、私が一目散に蒼羽の元へ走るのを見て、口元を緩めた。



「少しの間くらい良いだろ。好きな人と話してる方が、夜野も元気になるだろうしな」
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