とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「琴音さん!」


私が近づくと、立ち上がって名前を呼んだ。


「あ、あなたは……」


「すみません、私が付いていながらこんなことに」


「龍聖君は大丈夫なんですか?」


「意識がない状態で……ですから私も詳しいことがわからなくて」


頭を抱えるようにして顔を歪めたのは、あの時、百貨店で会った青山さんだった。


憔悴していて、あの時とはかなり印象が違って見えた。


龍聖君のことをすごく心配してるからだろう、この人にとっても、龍聖君は大切な仲間だから。


「すみません、琴音さんの勤務先の店長をしています綾井です。いったい何があったんですか?」


「はい。龍聖さんといつものように得意先にご挨拶に伺った後、次の訪問先まで歩いていたんです。その時に……近くを通ったバイクと接触してしまって。遠くまで飛ばされるということはなかったんですが、最初はあった意識がだんだん無くなっていって……」
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