とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
今は仕事に集中しないとって思ってたところで、恋愛の悩みなんて抱えてる場合じゃない。


いったい、どうすればいいんだろう?


この唇には、店長にキスされた感触がまだ残ってる。


その時、なぜか龍聖君の顔が浮かんだ。


3年前のあの日の思い出……あのキスがフラッシュバックしてきた。


目を閉じると、私に笑いかけてくる龍聖君の顔がとても優しくて、何だか泣きそうになる。


とっくに私の元から離れてしまった人なのに、まだ私の中に現れるなんてズルいよ……


ダメダメ!


もう何も考えちゃダメだ。


店長のことが「好き」なのか「好きじゃないのか」。


その問題の答えを出すことはとても困難なこと。


今の私にはどんな数学や英語の問題よりもずっと難しい。


電車はあっという間に到着し、人の流れにのって私はホームに降り立った。


とりあえず私は、一旦考えることを放棄した。


早く帰って、お風呂に入って、温かい飲み物でも飲んで、さっさと眠ろう。


そんな小さな安らぎを求め、私は、一人暮らしのマンションまでの道のりを足早に歩いた。
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