好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

5.見送りと約束と

 それからさらに、三年が過ぎた。
 二人はともに15歳。

 ジェラルドは益々たくましく、美しい青年に育った。文武両道、使用人たちにも気遣いができ、明るくてとても優しい。領民たちからの評判も上々で、彼のことを悪く言うものは一人も存在しなかった。

 そんな中、ジェラルドはアカデミーに合格し、王都で寮生活を送ることになった。
 アカデミーには三年間在籍し、みっちりと教育を受ける必要がある。領地に帰ってくるのは年に一度か二度。長期休暇の折だけになるのだという。


「ジェラルド様が居なくなると、寂しくなるわね」

「……そうだね」


 母親とともに寂しさを共有しながら、メアリーは小さく息を吐く。


(だけど、良い機会だったのかも)


 メアリーがどれだけ距離を置いても、ジェラルドはしつこく追いすがってくる。彼の好意は恋愛感情と言うより家族に対する親愛の情なのだが、それでも侍女たちのやっかみは以前よりも強くなっていく。
 メアリーだけを特別扱いをするのはズルい。気に食わない、というのがその理由だ。


 だから、この辺りで物理的に距離を取るのも悪くない。もちろん、寂しくはあるけれど、仕方のないことだと思った。


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