好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

6.俺がいるだろう?

 ジェラルドは宣言どおり、まめまめしく手紙を送ってきた。

 学園や学友、王都の様子や日々の生活など、彼の暮らしぶりが活き活きと、頻繁に伝わってくる。ジェラルドが新しい生活を心から楽しんでいることが伝わってきた。


 それなのに、彼の手紙にはいつも、メアリーへの想いが綴られている。『会いたい』と、読んでいるだけで胸が切なくなるような、そんな筆跡で書かれているのだ。


(わたしのことなんて忘れてしまって良いのに)


 心のなかでメアリーが呟く。
 けれどそれは、彼女の本心ではなかった。

 ジェラルドからの手紙を懐に入れ、毎日、何度も読み返す。
 彼から手紙が届くたびに、せっせと返事を書き綴る。

 『わたしも会いたい』と書くことはできなかったが、日々の出来事や感じたことを伝えることで、彼と繋がっていられるような気がしてくる。そんなふうにして、メアリーはジェラルドのいない寂しさを紛らわせていた。



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