好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「頭を上げて――――そうかしこまる必要はない。
メリンダは昔、この城で働いてくれていてね」

「え……? そうなのですか?」


 メアリーはまたしても目を丸くする。
 予想はしていたものの、彼女はメリンダの過去を知らされていないらしい。


(メリンダは僕が想うほど、僕のことを想ってくれていなかったのだろうか?)


 ステファンの胸がチクリと痛んだ。


「ああ。彼女はとても優秀な侍女だった。明るくて素直で、働きものでね。私はメリンダが大好きだった。
君はメリンダによく似ている。懐かしすぎて、ついつい声をかけてしまったんだ」


 言いながら、涙が零れ落ちそうになる。ステファンは必死で笑顔を取り繕った。


「そうでしたか……母のことを覚えていてくださって、ありがとうございます」

「当然のことだよ。それで、今、メリンダはどこに……?」


 尋ねつつ、ステファンの胸がドキドキと鳴る。

 メリンダとはもう二度と会えないと思っていた。けれど、こうして彼女に繋がる手がかりが見つかった以上、会いたいと願ってしまうのは仕方がないことである。


「――――母は二年前に亡くなりました」

「え……?」


 その瞬間、ステファンはその場に崩れ落ちそうになった。周りに人がいる手前、なんとか堪えることができたものの、その動揺はあまりにも大きい。


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