好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「メリンダが亡くなった……」


 そんなの嘘だ。とても信じられない――――信じたくなかった。
 
 目頭が熱い。
 このまま感情のままに涙を流せたらどれだけいいだろう? 声を上げられたらどれだけいいだろう?

 けれど、メリンダがいなくなって以降のステファンは王族らしく、常に気高く振る舞ってきた。人前で涙を流すなどとんでもない。弱みも迷いも、誰にも見せてはならない。常に完璧な王族として凛と立ち続けなければならない。

 それこそがメリンダが愛した自身の姿であり、彼女を愛することに繋がるのだと、そう信じて。


「――――メリンダは一体、どうして……?」

「風邪をこじらせてしまったんです」


 メアリーが言う。ステファンは自分をなだめるため、何度も深呼吸をした。


(そんな……そんなことで)


 もしも自分が側に居たらなら、メリンダはもっと長生きできたのではないか? 彼女を守ることができたのではないか? 少なくとも、こんなふうに知らない間に彼女を失うことはなかったのではないか? ――――そんな想いが胸を突く。


「メリンダの夫は――――君の父親は、何をしていたんだ?」


 なんで守ってやらなかったんだ?
 メリンダを愛していたのだろう?
 どうして、どうして――――?


 尋ねながら、ついつい咎めるような口調になってしまう。


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