幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで
ピンポーン♪

ドアチャイムの音に気付いて時計を見たら11時半。もうお昼前か…

「はい」
ドアチェーンをかけたまま開けるとそこには可愛らしい若い女性が立っていた。

「こちら呉田さんのお部屋ですよね。私、大家の娘の諸橋 夢莉(ゆめり)といいます」

あぁ、例の保育士さんか。
「お世話になっております」と言いながらチェーンを外した。

彼女は「朝お見かけしたんですけど、呉田さんは…」と言いながら、玄関に私の靴しかないのを見て「今はお出かけの様ですね」と続けた。


樹王の靴がないのはベランダで干してるからなのだけど、なぜか「いますよ」とは言いたくなかった。
…たぶんそれはなけなしの女の勘。


「あの、ご用件は…」と言うと彼女は「ドア閉めますね、失礼します」と狭い玄関に入ってきた。

「あなたが同居人の方ですか?」
「はい、樹王の同居人の栃泉美桜です」

「あの、失礼を承知で言わせて頂きます!あの…栃泉さんが家事とかお料理とか呉田さんのお世話ができないのであれば、私に代わらせて下さい!」

「…それはどういう事でしょうか」

「少し前に、コンビニで呉田さんがお弁当をいくつも買って帰るのを見たんです。朝だったのでたぶんお仕事帰りかと思うんですけど…それ見て栃泉さんがお料理してないのかなって…」

「あー…」

私がすっごい忙しかった時かな、樹王に私の分も頼んだっけ…


「…お家が火事に遭われた事はお気の毒だとは思いますけど…呉田さんに負担を掛けるばかりで、支えることができないのなら…呉田さんの幸せを考えてあげてほしいんです。栃泉さんが一緒に暮らされてると、呉田さんもご結婚が遠のきそうですし…」


「………」


「あとこれ…呉田さんに食べて貰いたくて作ったんです。あっ、栃泉さんも良かったら召し上がって下さい。…あの…私、呉田さんが好きなんです…ご承知おき下さい。…では失礼します」


そう言うと、私にタッパーを預けた彼女は一礼して出ていった。

< 17 / 38 >

この作品をシェア

pagetop