もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 あの指輪の片割れを身につけた女性は存在しないのだ。

 疲れて帰宅した彼を温かく迎え、優しく抱擁するような人は、どこにも。

 四年前に一度だけ見た彼の情熱的な眼差しを知っている女性は、まだ私以外いないのかもしれない。

 その事実がこんなにもうれしいなんて。自分の中にある蒼史さんへの想いがいかに大きいかを知る。

「それより、君はどうしてここに? 怪我か? 具合が悪いのか? 見たところ顔色が悪い以外は問題なさそうだが」

「私は元気です。すごく」

 これではまるっきり医者と患者のやり取りだ。

 かつてもそうだったかどうかは不思議と思い出せない。

< 52 / 281 >

この作品をシェア

pagetop