もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 強く打ち付けた頭よりも、突っ込んできたバイクの前輪に巻き込まれた脚の方が重傷で、二度と歩けなくなる危険性があった大きな事故だった。

 裂けた神経を繋ぎ合わせ、もとの通りに動くよう手術を担当したのが蒼史さんだ。

 当時から天才外科医と称されていた彼に執刀してもらえたのは、本当にただの偶然である。私は奇跡だと思っているけれど。

 私を見下ろす蒼史さんの眉根が軽く寄る。

 私も弟も関係ないのなら、いったい誰が病院に関係あるのだろうと思っていそうだ。

 ごまかして立ち去る選択肢が頭をよぎるも、さすがに不義理だと判断して正直に話すことにする。

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