もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「息子が熱を出したんです。それでお世話に──」

「息子だと?」

 驚きと戸惑いが低い声から感じられる。

 蒼史さんはなにか言いかけるように口を開いてから、すぐにはっと考え直したのか、口を閉ざした。

 そしてますます眉間の皺を深めながら言う。

「……あの夜の?」

「違います」

 医者の彼でなくとも簡単にたどり着く質問を即座に否定する。

「まだ二歳にもなっていない子ですから。……だからなにも心配しないでください」

 これは嘘だ。

 優史はとっくに二歳を超えているどころか、そろそろ三歳になろうという頃である。

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