もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「柚子」

「失礼します」

 また彼に引き留められまいとすばやく腕をすり抜け、階段を駆け上がる。

 さすがに私を追いかけてきて話を詰める余裕はないだろう。蒼史さんはこの病院に医者として来ているのだから、私的な問題にかまける時間はないはずだ。

 優史のいる三階では立ち止まらず、一気に四階まで走る。

 病院内で走ってごめんなさい、と心の中で謝罪した。

 私が思った通り、蒼史さんが追いかけてくる気配はない。

 一気に階段を上がったからかひどく息が上がって胸が苦しかった。だけど本当にそれだけが理由でこんなにも苦しいのかはわからない。

 蒼史さんが困っているなら力になりたい。

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