おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「それで……そんな顔をして何かあったのかい?」
何かあったのだと洋介も察するほど、相当酷い顔をしていたらしい。
症状の観察は医者の基本だ。どこぞの名探偵みたいだと、少し笑えた。
「あの……洋介先生はご存知なんでしょうか?どうして香月くんが大学病院を辞めたのか……」
「うちで働きたいって言い出した時に聞いたからね」
「理由を教えてもらうわけにはいきませんか……?」
「本人には聞かないのかい?」
もっともなことを指摘され、千春は俯いた。
香月ならたとえ真実とは違っても千春のせいではないと言うだろう。だから聞けないし、聞かない。
頑なな態度の千春を洋介はゆっくりと諭していった。
「香月と千春ちゃんが結婚するって聞いた時、正直少し心配だったんだよ。あまりにも突然だったし、二人の距離感は少し他の人とは違うようだから。結婚した後もちっとも夫婦らしくないし……だから同居をすすめたんだ。少し強引だったかね?」
千春は首を横に振った。
勘づいていても口には出さず見守ってくれたことに感謝こそすれ、非難する気にはなれなかった。
「君達はもっと互いに話し合うべきだ。夫婦になったんだから」
洋介は最後に舅として温かい助言と処方箋のような笑みをくれた。