おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
タクシーに乗って三十分ほどで、学会が開かれている槙島コミュニティホールに到着する。
案内通りにホール内を歩くと、小児心臓外科学会の会場はすぐにわかった。
受付には聖蘭医科大の大学生、そして彼らを監督するようにスーツ姿の真田が立っていた。
真田は千春がやって来たことに目を見張った。
「ここは貴女が遊びに来るような場所ではないのよ?」
言外に帰れと真田から諭され頬に朱が走る。
しかし、千春だって必死だ。香月に会う前に門前払いされるわけにはいかない。
「あの!先日おっしゃっていたことなんですけど!私、香月くんを大学病院に戻るように説得出来ません!柳原こどもクリニックの患者さんには香月くんが必要だと思うから!」
千春がそう叫ぶと、真田は目をみるみる釣り上げた。
「貴女、自分が何を言っているかわかっているの?あの若さで及川先生の第一助手を任せてもらえるのは香月ぐらいよ?彼のキャリアを考えるなら大学病院に戻って小児心臓外科医としての腕を磨くべきだわ!」
真田の言うことはおそらく正しい。でも正しいから何をしてもいいというものでもない。
負けるなと自分を鼓舞していく。