おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「毎日夜更かしするし、脂ギットギトのラーメンばっかり食べまくるし、フルマラソンにだって挑戦する!定期検診だってサボってやる!それから……それから……」
「ちぃ、頼むからもうやめてくれ」
「香月くんがいけないんでしょう!?恵流様のブロマイドを盾にして結婚しろなんて言うから……!私は……っ!香月くんがずっと好きだったのに!」
こんなやぶれかぶれで好きだと暴露する予定ではなかった。
香月がはっきり言ってくれないから、自分に都合のいい夢を見て、勝手に裏切られた気持ちになる。揺れに揺れた恋心が答えを求めて喘いでいる。
「もういい!ちゃんと言ってくれないなら離婚する!好きでいるのもやめる!」
「ちぃ!」
香月に背を向けたその時、行くなといわんばかりに抱き寄せられる。
「離してよ!」
「離さない!他の男のところに行かせてたまるか……!何のために強引に結婚したと思っているんだ!」
この逞しい腕に噛みついて、逃げてしまえばいいのに。嫌いになったと言ってしまえればどれほど楽になれるだろう。しかし、千春は嘘でも香月を嫌いだとは言えなかった。
「俺もちぃが好きだ……」
振り絞るような小さな声だったが、千春の耳にはしっかり届いていた。
「学会が終わったらすぐに帰るから家で待っていて欲しい」
偽らざる香月の本心を聞いた千春はうんと小さく頷いた。