おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「あ、の……。どうして途中でやめたの?」
千春から抱いて欲しいと懇願され、香月にとっては垂涎ものだっただろう。
「俺は医者として最低なんだ……。身体を気遣うフリをして、いつも構いつける理由ばかりを探していた。ちぃは明るくて、頑張り屋で、心臓のことがあったって自由に生きていけるのに、あえて縛りつけるような真似ばかりしてきた。そんな俺にちぃを抱く資格があるのか、好きだと伝えていいのかと思い始めたら……続きが出来なかった」
医者としての倫理観と、千春に対する独占欲の狭間で苦しんだ香月を笑えなかった。千春も似たようなことで悩んでいたからだ。
「私達って似たもの同士だったんだね」
千春は懺悔する香月を抱きしめた。
千春のためならどんな愚かな行動もとってしまう香月がたまらなく愛おしい。
「私が好きになったのは、愚かで最低な香月くんなんだからそれでいいの」
「卑怯な手を使って、ちぃと結婚した俺を許してくれるのか?」
「大好きだよ、香月くん。一生私の傍にいて……」
「キスしていい?」
「う、ん……」
突然されるのも好きだが、予告されてから徐々に距離が詰まっていくのも最高に好きだ。
香月がどれほど千春を好いているか、思い知らされながら待つ時間が……たまらない。
触れるだけの優しいキスは誓いの証のようだった。
「離婚しなくていい?」
「そ、それは言葉の綾ってやつで……。抱いてもらえなかったのが苦しくて……」
愛されていないなら離れた方がいいと思った。離れられるはずがないのに。
香月は千春の第二の心臓だ。心臓がなくなったら生きていけるはずがない。