おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「ま、指輪代は俺が出すよ。その代わり、肌身離さず身に着けるように」
「何言ってるの?結婚指輪って元々そういうものでしょう?言われなくたって肌身離さず大事につけるよ」
香月は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で千春をまじまじと見つめた。
「うん。そうだよな……。流石だな。ちぃはすっかり俺の立派な奥さんだ」
香月はたかが指輪のこととは思えないほど褒めそやすと、はにかみながら千春の頭をヨシヨシと撫でた。
(奥……さん……?)
聞き慣れない単語に千春は目をぱちくりさせた。
婚姻届を提出したその瞬間から、香月は千春の夫であり、千春は香月の妻だ。当たり前のことではあるけれど、どことなく面映ゆい。
千春をそれとなく話題を変えた。
「フォトウェディングの式場の予約は取れたんだっけ?」
「ああ、六月二十日の日曜日だ。ちゃんとちぃの希望通りにしたからな」
「えへへ。ありがと」
予約済みの公演チケットと日程が被ったら一大事だ。それだけは千春とて一切妥協できない。指輪と写真を撮ることこそ了承したが、結婚したからといって推し活を控える気は毛頭なかった。