おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「俺はいいんだよ。夜勤やらなんやらでそこそこ鍛えられてるし。でもちぃは違うだろ?もっと自分の身体を労ってくれ」
香月は潔いほどに、自分のことを棚に上げた。
香月に言われるまでもない。自分の身体のことは自分が一番よく分かっているつもりだ。
「ねえ、香月くん。なんで結婚なんて言い出したの?……別に結婚しなくても今まで通りでよかったじゃん」
お人好しで慈悲深い香月は頼んでもいないのに、書類上の妻という厄介なものまで背負い込んだ。
結婚する前と結婚した後を比較しても、二人の生活スタイルはほとんど変わっていない。隣同士の家に住み、同じ職場で働き、それぞれの家に帰って眠りにつく。
婚姻届を提出し、千春を妻にして何かメリットでもあるのだろうか?
さらに言えば、ブロマイド一枚で買収した妻なんかのために、わざわざ手間とお金をかけて指輪を買い、ドレスを選び写真を撮るなんて、阿呆の極みだ。
「俺よりちぃの趣味に理解のある男がいるか?黄金塚の歴代のトップスターを暗唱できる男はそういないぞ」
「まあ、そうだけど……」
珠江の黄金塚英才教育の賜物だろうか。医学部主席卒業の立派な頭脳のリソースがそんなことに使われているなんて、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになる。