おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

「黒のタキシード、適当に見繕っておくから。サイズだけ後で教えて」
「ちぃ」

 香月は自分の家に帰ろうとする千春を呼び止めると、膝の上に置いていたノートパソコンを閉じベッドの端に置いた。

「夫婦じゃないとできないこと……してみるか?」
「香月くん?」
 
 こちらにこいと手招きされベッドに近づいていくと、突然ぐいと腕を引かれた。倒れ込んだ身体を香月に抱き止められたかと思えば、クルリと視界が反転する。
 ベッドに横たえられた千春の真上には、香月が覆いかぶさっていた。

「ちぃ……」
 
 焦げ茶色の瞳でじいっと見つめられると、頬が熱くなっていく。身体中の血液が、顔に集まっていくようだった。心臓が俄に不協和音を奏で始める。
 千春は初夜がまだだったことを今まさに思い出していた。
 
(もしかして、今から……しちゃうの……?)

 香月の顔が徐々に近づいてきて、千春は目をぎゅっと固く瞑った。
 めくるめく予感に胸をときめかせ香月の次の行動を待ち焦がれていると、額にそっと唇が落とされた。

(あ……)

 期待していたものとは違う優しいキスに閉じていた目を開けると、穏やかに微笑む香月と目が合う。

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