毒舌な航空自衛官は溺れる愛を捧げたい
「うちの息子、もう三十なんだけど全然出会いがなくて困っててね。果林ちゃんと年齢が離れてしまってるけれど、よかったら会ってくれないかしら……」
……三十。私は今二十一歳。
これは遠回しに「うちの息子と付き合って」と言われているんだろうか。
でも、九個も年が離れているんだ。それだけ離れていたら、私の趣味も見て見ぬふりしてくれる気がする。
「分かりました。会うだけでいいなら……」
「助かるわ。ちょうど今日帰ってくるのよ!」
おばさんはホッと安心したように息を吐いた。
おじさんとおばさんの息子さんなら、絶対にいい人に決まっている。
息子さんに会うために閉店準備をしながら待っていると、
「帰ったよー。この間言ってた忘れ物だけどー」
裏口から男性の声が聞こえた。姿は確認していないけれど、息子さんだと分かり、緊張で体が強張る。
「昴、お帰り。先月からバイトに来てくれている果林ちゃんもいるのよ!」
おばさんが「昴さん」という人に話しかけに行き、カーテンからその人が顔を出した。
「どうも……って、あれ。柏?」
「えっ!? 久藤教官!?」
目の前には、航空学生の時に私に一対一で機体の操作指導をしてくれていた、久藤昴一尉が立っていた。
久藤教官は怖かった。けれど、プライベートは優しくて、アメとムチがハッキリしていると聞いたことがある。航空学生の間では若いイケメンの教官と話題になったほどだ。
プライベートまで教官と接していなかった私は、教官のアメがどういう感じか知ることはできなかった。
もう二度と会うことはないと思っていたのに、おばさんとおじさんの息子さんが久藤教官だったなんて。