約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

鬼の花婿



 わたしが学校に復帰する日は高橋さん、四鬼さんの登校とも重なった。
 みんなの注目先が3分割されたと言えばそうだけれど、わたしはHRが終わるなり席を立つ。きっと高橋さんの回復を喜ぶクラスメートはわたしが居なくても気付かない。

「浅見さん、おはようございます」

「柊先生?」

 吐き気を押さえ保健室のドアを開けると、柊先生が居た。

「はい、私も今日からこちらに常駐する事になりまして。顔色が良くないですね、どうぞこちらへ」

「……」

「身構えなくていいですよ。カウンセリングではありません」

 白いカーテンを引き、簡易ベッドを勧められる。わたしの他に生徒はいないようで安心した。ホッと息を抜く。

「久し振りの学校で緊張してしまいましたかね?」

「まぁ、そんなところです。そうだ、病院ではありがとうございました」

 四鬼さんの関係者と今は会いたくなかったがお礼は言わないといけないだろう。

「いえいえ私は何も。お礼なら千秋君に伝えて下さい。あの手厚い看護は彼の力が働かなければ叶いません」

 柊先生は四鬼さんが転校してきたのを当然把握しており、ここへ常駐するのは四鬼グループの意向やもしれない。何故なら柊先生は会長を当主と呼んでいた。四鬼家との関わりが深そうだ。

「お察しの通り、私は千秋君のお目付け役を兼ねて配属されました」
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