約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「桜子ちゃん、そのまま聞いてくれ」
「はい」
真っ直ぐ見据えられ、甘えた囁きで許しを請われたら流されてしまう。なので振り向かず話してくれるとこちらも助かる。
「美雪には触れていない。柊の大事な妹に手を出したりしない」
「美雪さんには? というと?」
「他の女の子はーーうん、それなりに。それでも責任が取れない真似はしてこなかったよ」
「四鬼さんが思っていなくても、相手の女の子は四鬼さんが好きだったんじゃないんですか? 好きにさせた責任はありますよ?」
「好きにさせた責任、か。そうだね、あるよね」
「偉そうにすいません。わたしが怒る事じゃない」
「構わない。僕は変わりたいから。関わった全員とまではいかないけど、謝ってくる」
ふいに立ち止まる四鬼さん。前方にハザードランプを点した車があり、運転手さんがわたし達の姿が確認すると後部座席を開けてくれる。
「乗って」
「え、四鬼さんは?」
「鬼が隣に乗ったら怖いでしょ? 今の僕も何かしそうで怖い。柊も一時とはいえ、理性を無くしちゃうくらいだからさ」
「先生は8割噓だと言いました。わたしを脅かそうとしたんですよ」
「そういう意味もあっただろう。一族にとって君がどんな存在であるか示したかったとか。でも本当のところは柊にしか分からないよね。いいから乗って」
ジェスチャーで乗車を促す。わたしに触れようとしない。おずおず着席すると四鬼さんは頷き、ガラスに手を付けた。指輪がかちりと音をたてる。
「はい」
真っ直ぐ見据えられ、甘えた囁きで許しを請われたら流されてしまう。なので振り向かず話してくれるとこちらも助かる。
「美雪には触れていない。柊の大事な妹に手を出したりしない」
「美雪さんには? というと?」
「他の女の子はーーうん、それなりに。それでも責任が取れない真似はしてこなかったよ」
「四鬼さんが思っていなくても、相手の女の子は四鬼さんが好きだったんじゃないんですか? 好きにさせた責任はありますよ?」
「好きにさせた責任、か。そうだね、あるよね」
「偉そうにすいません。わたしが怒る事じゃない」
「構わない。僕は変わりたいから。関わった全員とまではいかないけど、謝ってくる」
ふいに立ち止まる四鬼さん。前方にハザードランプを点した車があり、運転手さんがわたし達の姿が確認すると後部座席を開けてくれる。
「乗って」
「え、四鬼さんは?」
「鬼が隣に乗ったら怖いでしょ? 今の僕も何かしそうで怖い。柊も一時とはいえ、理性を無くしちゃうくらいだからさ」
「先生は8割噓だと言いました。わたしを脅かそうとしたんですよ」
「そういう意味もあっただろう。一族にとって君がどんな存在であるか示したかったとか。でも本当のところは柊にしか分からないよね。いいから乗って」
ジェスチャーで乗車を促す。わたしに触れようとしない。おずおず着席すると四鬼さんは頷き、ガラスに手を付けた。指輪がかちりと音をたてる。