約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「やぁ、桜子ちゃん! 授業中に君への思いを英語とフランス語とイタリア語、あとドイツ語で綴ってみたんだ。受け取ってくれるかな?」

 休み時間になると早々に四鬼さんがやってきた。様々な言語で書かれた分厚いラブレターを渡される。

「はぁ、しっかり授業を受けて頂かないと私が叱られるんですが?」

 柊先生の注意に迫力はない。言っても無駄と半ば諦め顔だ。

「出席はしてるんだから文句言うなよ。学園でとっくに習った所を今更復習しても退屈だ」

「鬼月学園の教育水準は全国屈指ですしね、千秋様には物足りなくて当たり前か。頭と身体が怠けないうちに学園へ戻りましょう」

「ーー戻るって? 桜子ちゃんも一緒に?」

「は、はい。先生から学園が鬼にとって学びやすい場であると説明を受けました。学費とか、勉強についていけるか不安ですけど」

「そんな! どちらも心配は要らないよ! ご両親への説明は任せておいて」

 四鬼さんはわたしの両手をとり、上下に揺らす。

「葉月高校も素敵だけど、鬼月学園も気に入って貰えると思う。あぁ、学園の制服、桜子ちゃん似合うだろうなぁー」

「……う、あの制服、やっぱりわたしも着ないといけないですよね」

「あれ、制服が気に入らない? 確かに今の制服も桜子ちゃんに似合って可愛いけれど」

「いえ、気に入らないとかじゃなく気後れしちゃうというかーーわたし、葉月高校の制服に憧れて入学したんです。お祖母ちゃんもここの出身者で、同じ制服を着てみたかったから」
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