約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

わたしの気持ち

「こらこら、あなたはベッドで休んで居て下さい」

 おばさんとの話に割り込むなと釘をさしつつ、ベッドで聞いていなさいと言う。涼くんの件を間接的に教える計画だろうか。

 先輩等から聞いた話を持ち出せば話の流れもスムーズになるが、おばさんの憔悴した姿を前にすると言い出しにくい。と言って見過ごせないし、涼くんの身に起きた事を知りたかった。
 指示に従わず、おばさんをじっと見詰める。

「あなた、涼と仲がいいの?」

 おばさんの目にわたしは他人として映り込む。

「彼は覚えていないかもしれないけれど、色々助けて貰いました」

「涼が? いつも自分の事で精一杯そうなのに人助けなんて出来るのね、あの子」

「ぶっきらぼうで言葉足らずな部分がありますが、真っ直ぐで、思い遣りがあって……」

 おばさんに似ていますと言外に込める。
 伝えるうち、わたしまで泣きそうになって、涼くんは無事なのだろうか、今どうしているのだろう。

「わたしは涼くんの思い遣りに気付いていたくせ、ありがとうと言わなかった。不器用なのは涼くんじゃなく、わたしでした」

 わたしさえ素直になれていたなら、こんな目に遭わせなかったかもしれない。涼くんの手を上手に離せたはずなのに鬼の執着心で離せなかった。
 ううん、鬼の性のせいにしていたんだ。

「涼を大切に想ってくれてるのね。ありがとう」

 おばさんがわたしを抱き締めてくれる。
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