約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「この部屋はいわゆるVIPルーム、特別な患者さん仕様ですからね。お水を飲みますか?」

 冷蔵庫や簡易のキッチンまで備え付けてあり、柊先生がコップを用意する。

「VIPルーム? どうしてわたしがそんな所に?」

「それは追々と。それより吐き気は?」

 介助されつつ、ゆっくり身体を起こす。水を受け取りひとくち含めば、心地よい冷たさが流れていく。

「吐き気はありません。ただーー」

 記憶に手を当てたところ、病衣へ着替えさせられていた。採血の跡もある。  

「ただ?」

「夢を見ていた気がします」

「夢ですか?」

「あっ、吐き気とは関係ないですよね、すいません」

「いえいえ、宜しければ聞かせて下さい」

 椅子をベッドの脇まで持ってきて、柊先生は穏やかに促す。

「あの、先生はこの病院で働いてるんですか?」

「四鬼病院に籍はありますが、患者は受け持っていません。どちらかというと私は研究者です。
あぁ、私のつまらない身の上話より、浅見さんの夢の話が聞きたいですね」
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