声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ヴィルフェルトっ!! よくも~!!」
「きゃーっ!!」

 私は咄嗟の事で動けませんでした。
 叫び声をあげた方のほうを見るとなんと私に向かってナイフを向けていたのです。
 これは、まずいです……!

 しかし、身体はすくんでしまって一歩も動けません。
 刺されてしまう……!
 そのように思った瞬間、何かが倒れる音が響き渡りました。

 ゆっくり目を開けると、大きな背中が目の前にあって、その人はなんとオリヴィエ王子でした。
 そのすぐ前の床には先ほどの暴漢が倒れており、その傍に落ちたナイフを王子は足で払いのけました。

「大丈夫かい、ご令嬢」
「(……こく)」

「王子っ! ご無事ですか?!」
「私は大丈夫だから、すぐにこのご令嬢に怪我がないか確認と、あとこのならず者の処理を」
「かしこまりました!」

 すぐさま警備の方々がたくさんいらっしゃり、さらに王族もいらっしゃったため騎士兵もやってきました。

「お怪我はありませんか、ローゼマリー様」
「(はい、大丈夫です)」

 私は騎士兵の方に保護されてその日は家まで送っていただきました。
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