声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 優しく頭をなでてくださるお兄さま。

 笑っているお兄さま。
 
 叱ってくれるお兄さま。
 
 心配してくれるお兄さま。
 
 寝顔のお兄さま。
 
 そして、そして……。


 私は後ろを振り返り、お兄さまのほうを見て言いました。

「(お兄さま、ありがとうございました)」

 私の口の動きを見てお兄さまは目を見開きました。
 どうして最後まで声が出ないの……。
 お願い、出て。お願いっ!!!

 私は精いっぱいの声を出して叫びました。


「お兄さまっ!!!! 大好きでした!!!」
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