声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「さ、召し上がれ」
「(ありがとうございます!)」

 私はやけどをしないように一口飲むと、今度は紅茶の味が口いっぱいに広がってきます。

「よかった、気に入ったみたいだね」
「(ふんふん!)」

 私はもうとても頷いてケーキとアップルティーを交互に楽しんでは、なんて幸せなんだろうとため息をつきました。
 しまったっ! 食事に夢中になりすぎました……。こんなにがっついて食べてはいけませんよね……。
 食べるペースを落とした私に気づいて、ラルスさまは声をかけてくれます。

「大丈夫だよ、たくさん好きなだけ食べて」

 私は嬉しくてこくりと頷くと、お言葉に甘えて次々に口にケーキを運んでいきました。

「ローゼマリー」
「(?)」
「もううちでの暮らしは慣れたかい?」
「(ふんふん)」
「そっか、よかった。もし嫌じゃなかったら、『ローゼ』と呼んでもいいかい?」
「(ローゼ?)」
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