声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ローゼッ!!!」
「──っ!!」

 私を呼ぶ声がして礼拝堂の入り口のほうを振り返ると、そこには私と同じように雨でびしょ濡れのお兄さまがいて。
 ものすごい勢いで私に駆け寄ってき……っ!!

「ローゼッ! よかった……」

 勢いよく私はお兄さまに抱きしめられて、心臓がまたドクンと飛び跳ねます。
 お兄さま……ここまでもしかして走ってきてくださったのですか?
 いつものような落ち着いたお兄さまではなく、息も乱れて焦っているのが伝わります。
 私の心臓ではなくお兄さまの心臓の音が聞こえてきて、その鼓動はとても速くなっていました。

「どこも怪我してないかい?」
「(こく)」

 お兄さまは私が怪我していないことを確認すると、抱きしめながら頭を優しく撫でてくださいました。
 どうしてここに?
 そんな私の声はお兄さまには聞こえなくて、そのまま静かに話し始めました。
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