声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 数日が経過すると、私はすっかり身体がよくなり喉の痛みも引いていました。
 ですが、やはりまだ声は出ません。

「(あーーー)」

 私は毎朝起きるたびに声を出そうとしてみますが、うまく声が出せません。
 なんとも無力さを感じて私はそっと窓の外を眺めてみると、やはり公爵家ともあり立派な庭園が広がっています。
 ああ、なんて綺麗なところなんでしょうか、外に出てじっくり見てみたい。
 そう思いますが、それを伝える手段は今の私にありません。

 むずがゆく、歯がゆく、もどかしく……。
 思わず唇を噛みしめてしまいます。

 ちょうどそんな思いをしていたところに、いつものメイドさんがノックをして入ってきました。
 メイドさんは私の前で深々とお辞儀をすると、お話を始めます。

「私があなた様のお世話をさせていただきます、クリスタでございます。よろしくお願いいたします」

 私は慌ててベッドから立ち上がり、お辞儀をいたします。
 クリスタさまはとても綺麗なお顔立ちをされていて、金色の髪を丸く束ねていらっしゃいます。
 思わず見とれてしまう方で、まるでどこかのご令嬢さまのようでした。
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