敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
……どうしてこんなところに来ちゃったんだろう。

桜木社長の話を聞き流しながら、アルコールでぐわんと揺れる頭の中で、激しく後悔する。

軽い気持ちで誘いに応じたけれど、きっかけがあるとすればそれは紛れもなく優介だ。
私だって、優介から離れて交友関係を広げなければと意地になっていた。

自由にしていいと伝えてから三日間、優介は相変わらず澄ました顔で秘書としてこれまで通り働いている。
でも、いつ新しい仕事が決まったからと辞表を提出するかわからない。

優介がいなくてもひとりでやっていけるように、早く自立しなければ。
そしてあわよくば、優介を忘れたい。忘れなくちゃならないのに……。

離れていても、脳裏に浮かぶのは優介の姿ばかり。

「……珠子社長? 大丈夫?」

夢の中で桜木社長の声が聞こえる。

目蓋を押し開けようとするも、脳みそが撹拌されているかのように気持ち悪い。
なんとか動こうとしたら、さっき食べたものが口から全部出そうになった。

「あー。潰れちゃったか」

桜木社長の惚けた声が耳に届く。

悪酔いしないと保証するって言ったくせに……。
私はカウンターに突っ伏したまま、桜木社長を恨んでいた。

どうやって帰ろう、と漠然と不安に襲われたとき、肩をつかまれ体を起こされた。

「うっ!」

反動でこみ上げる嗚咽と戦う私を、桜木社長が抱きかかえる。

「ベッドで休んだ方が楽になるよ」

半ば引きずってスツールから降ろすと、桜木社長はぐったりとした私の体を両腕で拘束した。

「ごめん、飲ませ過ぎたね。でもまさかこんなに弱いと思わなくて」

謝罪の気配を感じさせない口調で言われた直後、ガチャリとリビングのドアが開く音がした。
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