敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
「あのね、私、優介に聞きたいことがあって」
「なんでしょう」

ダイニングテーブルの椅子に座る私の真横で、優介は立ったままこちらを見下ろした。

「桜木社長の別荘から帰るとき。私にその……キ、キスしたよね」

思い出してしまい、恥ずかしくて声をフェードアウトさせる。

「やっぱりあのとき起きてたんですね」

優介は私の心の機微など歯牙にもかけず、平然と答えた。

「気づいてたの?」
「まあ、呼吸の感じとかで」

全然動じないんだね。
私、ファーストキスだったんだけど……。

「あの後、なんて言ったの?」

車内できちんと聞き取れなかった言葉が知りたくて、私はすっと姿勢を正した。

すると優介は、一度視線をはずしてから、私をまっすぐに見つめる。

「俺から離れようとするからこんなことになるんですよ、って言いました」
「え……?」

小さく息を吐いた優介は、スッと屈んで膝を立てる。きょとんと見つめ返す私と、目線の高さを合わせた。

「俺がどれだけ苦労して、男を寄せつけないようにしていたと思ってるんですか?」

不服そうな声で眉根を寄せ、優介は焦れったそうに続ける。

「ほかの野郎に取られるくらいなら、どんな手でも使います。ていうか男とふたりきりなんて……気が狂いそうです」
「え……そ、そんな大げさな」
「大げさなんかじゃありません」

きゅうきゅうとした声で言い、優介は呆然としている私に焦燥を募らせたのか、奥歯を噛みしめるような苦い表情を作った。

「俺、かなり独占欲強いし嫉妬深いんです。長い付き合いなんだからわかるでしょう」
「は⁉」

いやいやいや、そんな当然っぽく言われても!

たしかにしょっちゅう私の行動を制限していたけれど、それはおば様の言いつけを守った保護者目線だと思っていた。

それに……。

「でも、ホテルではその、なにもなかったよね。だから優介は私のことなんて、なんとも思ってないのかなって……」

あのとき優介は無防備な私の心配ばかりして、手を出そうとはしなかった。
その反応で、私に対して恋愛感情はないのだと見限ったのだ。
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