敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
そんな欲望に対して体が正直に動いた結果、私は不器用に両手を広げ、勢い任せに優介に抱きついていた。
こんなに密着したのは、たぶん中学生の頃に体育の時間に足を捻挫し、優介のおんぶで保健室に行ったとき以来。

「っ、おっと」

椅子から雪崩れるように落ちた私に驚いて、一瞬憮然とした面差しになった優介だけれど、やがて私の背中に手を回し抱きしめてくれた。

今日一日、持て余していた感情の正体は、優介の本心が知りたいというウズウズだったんだなと合点がいく。

そしてあわよくば、こうして隙間なくぴったりと抱きついて。

「私もね、ずっと前から優介が好きなんだ」

長年心に留めていた思いを知ってほしかった。

それが叶ったのも刹那、優介は私を横抱きにすると無言ですっくと立ち上がる。

「えっ、ちょ……⁉」

戸惑ってあたふたする私に構わずに、臆面もなく歩き続けてリビングを出た。

桜木社長の別荘から帰るときもこんな感じだったけれど、今夜は行き先が違う。
着いたのは、優介の寝室。ベッドの上にゆっくりと私を座らせる。

「性急すぎて引いてます?」

真正面に腰を下ろした優介が、ベッドに片膝を立てて私と顔を接近させた。

「けど俺、ホテルで警告しましたよね」

グイグイくるから、スプリングがギシッと軋む。

『男を甘く見ちゃダメです。五秒あればめちゃくちゃにされます』

ホテルで放たれた言葉を思い出し、私は唐突な事態に剥いた目をさらにギョッと大きくする。

「ご、五秒でめちゃくちゃに⁉」
「いやそこはたっぷり時間かけますけど。大事にしたいからずっと我慢してたのに、無防備に煽る珠子さんがいけないんです」

子どもみたいな拗ねた口調で言って、優介は身動きが取れないほど強引な加減で私を抱きしめた。

「いつから俺のことを好きなのか、聞いてもいいですか?」

尋ねる口ぶりはとても丁寧だ。

「いつから、って。ずっとずっと前からだよ。気づいたら全部が大好きだった」

こそばゆくて心臓が口から飛び出そうになる。

体を離し、もじもじと下を向きながら小さく目線を上げると、優介は満足げに微笑んだ。

「俺と同じですね。ヤバい、幸せすぎです」
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