クールな君と愛しすぎる僕
「━━━━━寧音ちゃん、可愛い…可愛いなぁー!
好きだよ、好き……!」
「うん」

電車内。
並んで座っている、登羽と寧音。

基本的に登羽と寧音は、手をずっと繋いでいて離さない。
その上登羽は、身体ごと寧音を見つめ“可愛い”や“好き”を連呼している。

そんな登羽にやっぱり動揺することなく、淡々と話をする。

「寧音ちゃんは?僕の事好き?」
「うん。登羽のこと、好きだよ」

「フフ…嬉しっ!」
「あ!」

「ん?寧音ちゃん、なぁに?」
「職場の後輩に、登羽を紹介してって言われたの」

「━━━━━は?」

「やっぱ、嫌かな?」
明らかに登羽の機嫌が悪くなり、さすがの寧音も窺うように顔を覗き込んだ。

「やだ」
「そうだよね…ごめんね、変なこと言って」

「…………寧音ちゃんは、嫉妬しないの?
僕が、他の女に会うの」
「嫉妬?
紹介っていっても“私の彼氏です”って紹介するんだよ?」

「わかってるよ?」
「それで、どうして嫉妬になるの?」

「僕の目の中に、寧音ちゃん以外の女が入るんだよ?
嫌でしょ?」
「………」

「僕は嫌だよ!
寧音ちゃんの目の中に、僕以外の人間が入るなんて………
この目の中に入っていいのは、この僕だけなんだから」
登羽は、覗き込みながら寧音の目元をなぞった。


最寄り駅に着き、自宅マンションまでゆっくり歩く。
「………」
「………」


登羽の機嫌が悪い━━━━━━━

こんな話をした後は、あからさまに登羽の機嫌が悪くなる。
寧音の口から自分以外の話題が出ることを嫌う、登羽。

登羽の機嫌を直さなければ………!

「登羽」
「ん?」

登羽の前に立った、寧音。
手を繋いでいない方の手で、登羽の頬に触れた。
そして、ゆっくり撫でる。

すると、気持ち良さそうにすり寄せた登羽。

「登羽、好き」
そう言うと、背伸びをして口唇を重ねた。

口唇を離すと、登羽がフフ…と微笑んでいた。

「寧音ちゃん、もう一回!」
「うん…」

チュッ!チュッ!と啄むキスをする。


「フフ…幸せ~!」
機嫌が落ち着いた登羽を見て、寧音は思う。


━━━━━ほんと、犬みたいだなぁー
登羽って、扱いやすいな。


しかし登羽も、寧音を見て思う。


━━━━━ほんっと、扱いやすいなぁ寧音ちゃん。
あからさまに不機嫌になると、慌ててキスしてくんだもん!
フフ…キスしたかったし、丁度良かったな!


登羽の方が、一枚も二枚もウワテである。
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