あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
ふたりはあっけにとられて見ている。
「……すみません。部外者なのに偉そうな口をきいてしまって。忘れて下さい」
すると、宗吾さんが私を見ながらふたりに向き直った。
「お客様のおっしゃるとおりです。土は植物になくてはならないもの。花も緑も土の状態ひとつで変わります。ご理解頂けるお客様もいらっしゃるということが私どもには何よりのことです。塔子、そういうことだから土が落ちてたら見て見ぬふりでもしてくれ」
「何なの!相変わらずね、宗吾はそれだからダメなのよ」
塔子さんが宗吾さんに小さい声で言った。
「別に。お前にダメと言われようと、どうでもいい。分かってくれる人はいるからね」
そう言うと、私にウインクをして運んで行く。
塔子さんは、苦々しげな顔をして、隣の男性の腕に手を巻き付けると、一緒に歩いて行ってしまった。
どうしよう。
プレスの人だったら、私のせいで城田園芸の記事にひどく書かれて評価が下がってしまうかも知れない。