あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 バーテン君は笑って帰って行った。

 「それでさ、君はその彼氏とうまくやってるの?」
 
 失礼じゃない、その聞き方。

 「そうですね。付き合ってまだ間もないので、私に合わせてくれてます」
 
 「ふーん。男性に免疫がないんだから、たくさん経験したほうがいいかもね」
 
 は?何言ってるのこの人。
 
 「私は、ひとりで十分です。ゆっくりでいいので。彼もそう言ってるから」
 
 「もったいないね。今までの分、取り戻す勢いでいかないと。最近綺麗になって気になるんだよね。前から美人だとは思ってたけど」
 
 「……あの」
 
 「俺、今付き合っている彼女、別れ話が出てるんだ。良かったら一度俺とデートしてみない?お互いよく知った仲だしさ」
 
 ソファから腕を回して、私の肩を抱き寄せた。
 ビクッとした。
 どういうことなの?
 私をそういう対象として見てるっていうこと?

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