あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 カップルじゃないのに。
 どうして、そこにするの?

 日高さんが、近い。
 とても落ち着かない。手を握ったり開いたり。
 嗅ぎ慣れた香りがするけど、こんなに近いのはない。

 日高さんはそんな私をゆったりと背をつけたソファから見ている。
 
 「何になさいますか?」
 バーテン君が日高さんに聞く。

 日高さんが注文すると、聞いてきた。
 「早瀬さん、何にする」
 「え、えっと」
 
 バーテン君が言う。
 「初めての女性でも飲みやすい甘いもので少し軽いものをお作りしましょうか。オレンジベースとかでもよろしいですか?」

 いつもの私の飲んでいるものを説明している。
 
 「はい。それでお願いします」
 
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