あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
高校生のときに、ストーカーにあってからというもの、男性が怖くなった。
大学生の最初の二年間はビクビクとおびえて生きていた。
でも、優しい友人のお陰で、男の子と社会生活上の接点を繋ぐ会話は出来るようになってから卒業できた。
そうでないと、とても会社生活は送れていないと思う。
会社に入って、いいなと思える男性は出来たし、声をかけてもらったこともある。
でも、ふたりで出かけたり、心を許したりしたら、また優しい人が自分を束縛して追いかけてくるという夢を見てしまう。
どうしてもその先に進めないのだ。
それを、友人に言うと、やはり心療内科を勧められる。
そこまでして、男性と交際しなければならないのか。
結婚ってしなければいけないのか。
今時、結婚しなくてもシングルでもお仕事さえあれば、構わないのではないか。
そう思うのだ。
両親も、高校時代の私のことを知っているせいか、何も言わない。
会社では、早崎さんはそういう人なんだねという、認識がひろがりつつある。
昔ちょっとこういうことがあったとつぶやいたら、広まってしまった。
皆、最近は腫れ物に触るように適当なことを話しかけてくるようになり、まあ、楽になった。
それを見る同期の由美は、心配しているというわけだ。