あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 「ふーん」
 
 「そうなんです。じゃあ、さっきのをお願いします」
 
 そういうと、ソファ席に日高さんと戻った。

 ソファへ座るときに、窓の外を眺めて、下の道路を見たら今日も植栽をしている。

 何人かで手分けして樹木を剪定している。

 すると、そのうちのひとりがこちらを向いた。

 え?宗吾さん?

 すると、立ち上がってみている私の肩を抱きながら日高さんが下をのぞき込んだ。

 「何見てるの?」
 
 私は振り向いて、答えた。
 
 「下で樹木の剪定をしているみたいで、ちょっと見てました」

 宗吾さんがいる。
 こっちを見てたよね?

 このバーだって分かって見てた。
 私のこと見えた?

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