あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 宗吾さんに見られるのが怖くて、すぐに前を向いてソファに座った。

 彼は、まだ立ったまま下を見ている。

 「こういう所って夜に仕事してるんだ。まあ、土だらけだったり、剪定したら枝が落ちるから汚くなるしな」

 すると、バーのドアベルが勢いよく鳴った。

 こちらから入り口の様子が見えないので、わからなかったが、バーテン君が慌ててカウンターから出て行く。

 「待って下さい。その格好で入店はできません」

 少し大きなバーテン君の声がする。
 どうしたんだろう。

 「うるさい。玲奈を呼んでくれ」
 
 宗吾さんの大きな声がする。

 「え?」
 
 私はびっくりして立ち上がった。
 
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