大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「「ええっ!?」」
「にゃ!?」
 リリアナの発言にコハクを含めて全員びっくりしている。

「実はね、このクッキー型の魔道具なんだけど、これで魔物の体に触れたらどんな凶悪な魔物でもクッキーになっちゃうんですって!」
「はあっ!?」
 テオの声が裏返った。
 リリアナが得意げにクッキー型を見せる。
「ミスティをクッキーにしたら、きっとメレンゲクッキーみたいになるわ。ドラゴンだってクッキーにできちゃうのよ。すごくない!?」
 リリアナはレオナルドから教えてもらったクッキー型の効果を説明しはじめた。

 クッキー型を手に持った状態で魔物に近づき、体のどの部位でもいいから触れることができれば相手がクッキーになってしまうという。クッキーの重量は、魔物の重量に等しい。
 クッキー化は次に朝日を浴びるまで持続する。
 運べるほど小さい魔物なら朝日を浴びないよう建物内に閉じ込める手もあるが、ドラゴン級の巨大な魔物はそういうわけにもいかないだろう。だから、夜明けまでにクッキーを食べ切って討伐完了しなければならない。
 見事食べ切った暁には、通常通りの戦利品や素材一式がもらえるという。
 しかし普通の人間がドラゴンを一晩で食べ切ろうとすれば、どれほどの人数が必要になるだろうか。だからこのクッキー型には準備段階として、持ち主を大食い体質に変える機能が備わっている。
 この型を使用して普通のクッキーを作って食べれば大食い体質になり、ギルドで所有を放棄する手続きをとれば元に戻る。

 つまりリリアナは魔道具の誤使用で呪われていたのではなく、クッキー型を正しく使って大食い体質になっていただけだったのだ。
 一通り説明したレオナルドはリリアナに再度尋ねた。
「どうする? 大食い解除はギルドでできると思うけど、ここで解除する?」
「もちろんしないわ!」
 リリアナは即答で断った。
 いつでも解除できるなら、わざわざレオナルドにしてもらう必要はない。
「じゃあ改めて聞こう。君の望みはなんだい?」
 レオナルドに問われてリリアナは固まってしまった。大食いの呪いの解除、それしか頭になかったのだから――。
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