大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
6皿目 ソバ粉のガレット
 【ペットの違法取引に関する調査 報酬:ソバの実、石臼】
 ガーデン管理ギルドの掲示板に、一風変わった依頼が貼りだされている。
 
「ソバの実か……」
 ハリスが無精ひげの生えたあごを撫でて呟いた。
 これは彼が興味を示した時に無意識にする仕草であることを、リリアナは知っている。

 ソバはガーデンに隣接するケイラル国とその北に位置するラシンダ王国との国境付近で栽培されている穀物だ。
 報酬がソバの実ということは、その地域からの依頼だろうか。ガーデンからだと馬車で1日半あれば行ける距離だ。
 商家の娘としてソバに関する一通りの知識はあるが、実際に見たことも食べたこともない。
 どんな味がするんだろう。
 リリアナが掲示板を眺めながら考えているうちに、ハリスは受付のエミリーに依頼の詳細を確認していた。
 
「そうなんです。ケイラル国のマルドという街でペットの違法取引が行われているとの情報が寄せられたんです」
 エミリーがいつもの穏やかな笑顔を見せる。

 コハクのように魔物をペット登録して専用の首輪をはめれば、ガーデンの外に連れ出してもなんら問題はない。
 冒険者同士のペットの譲渡も認められている。
 ただしガーデンの外でペットの首輪を外すことと、冒険者以外に譲渡することは禁じられている。首輪に関しては、無理に外そうとするとその人の首から上が馬になってしまう呪いがかかり、ペットは死んでしまうらしい。ガーデンの外で弱体化が解けて暴れ出すとまずいからだ。
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