愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「あら、やえちゃんったら可愛い」

敦子さんが私の耳に掛けられている桜を発見して目をキラキラさせる。可愛いと言われて単純に喜んでしまう私は顔がヘラっと緩んでいるに違いない。

「えへへ。社長に付けてもらいました」

「んまっ! 社長ったらイケメン!」

敦子さんは口元を手で覆いながら大げさにリアクションした。
なんだか照れくさい気持ちになったけれど、当の社長は平然としていて落ち着いている。
私だけがドキドキしているみたいで落ちつかない。

「幸山さんによく似合うかと思って」

「ええ、本当によく似合って可愛いわぁ。こんなに可愛いと心配になっちゃう。やえちゃん、くれぐれも変な男には引っ掛からないでね」

「もう、敦子さんったら心配症だなぁ」

「心配もするわよ。若者なのに遊んでないんだもの。やえちゃんは真面目すぎるのよ」

「そんなことは……」

ない。
決して真面目なわけじゃない。
私だって遊びたいときもある。
けれどそれは家庭環境が許してくれない。
だから仕方なしに――。

と、ぐるぐる考えたところで社長がこちらをじっと見ていることに気づき思考が戻される。

「真面目なのが幸山さんのいいところであり俺も見習いたいと思っているけど、たまには肩の力を抜くことも大切だから、決して無理だけはしないように」

「あ、はい。ありがとうございます」

「なーんか、社長とやえちゃんって似たもの同士よねぇ」

敦子さんが楽しそうにケタケタ笑うので、私と社長も顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
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