愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】

「そんなに喜んでもらえるならちゃんとした誕生日プレゼントを渡すべきだったな」

「とんでもない! もう嬉しくてお腹いっぱいです」

本当に、胸が張り裂けそうなくらいに気持ちが満たされている。
誕生日を祝ってもらえて嬉しいだけじゃない。
こんな粋な計らいをしてくれる社長の優しさに触れて、また一段と社長のことが好きになった。

単純だけれど、この会社で働くことができてよかったなって、これからも頑張ろうって、そう思わせてくれた。

社長には感謝しかない。

またふわっと風が吹いて八重桜が揺れた。
桜の花びらがゆっくりと舞い落ちる。

ブルーシートの上では皆が笑顔で楽しそうに談笑している。
お弁当は外で食べているからかいつもより美味しい気がする。
頭上にはたわわに咲き乱れる桜の花。

優しい光景は見ているだけで癒される。

「社長、ありがとうございます。私、今までイベントごとに参加したことがなかったので、ひとつ夢が叶いました」

「そういえば夜はダメだと田辺さんが言っていたけど? 確かに幸山さんが飲み会に参加しているのは見たことがなかったな」

「はい、そうなんです。参加してみたいんですけど、ちょっと、……家庭の事情で」

「そうか、じゃあまた昼間に何かできるといいな」

「あ……はい、ぜひ」

本当は「お構いなく」と言おうと思った。
けれど社長があまりにも綺麗に微笑んでくれたから、その気遣いが嬉しくて素直に頷いてしまった。

いつかまた、こうして皆と楽しいイベントに参加できたら幸せだなと思う。
そのためには貯金を頑張らなくちゃ。
しっかりお金を貯めて、一人暮らしをするんだ。
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