優しく、ぎゅっと抱きしめて

でも、一つだけ言えることは…。



「だから……この関係を、壊したくないの」



“今”が崩れること。



玉砕覚悟で渡したはずのチョコレートに乗せた思い。



それは知賀くんに届いていなくて…正直、ちょっと安心していた。



伝えなければ傷つかずに済む。



心のどこかで、そんなふうに思っている自分がいて。



「いつかは壊れちゃうかもだけど…」



もし知賀くんが私と同じ気持ちでいてくれたとしたら、それ以上に嬉しいことは無い。



その上を望むなんておこがましすぎる。



でも…もし思いが通じあって、もし付き合うことになったとしても、不安は消えてくれないと思う。



私が知賀くんに釣り合うはずないって…相応しくないって、私も周りも思うはずだから。

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