ぼくの話をしようと思う



降りてきたのは黒いスーツを着た男で、その人がすぐに後部座席のドアを開けた。



ますます高鳴るぼくの鼓動と、周囲の歓声。



ゆっくり車から降りてくる女性が、人の隙間からチラッと見えた。



白いワンピースを着てた。



取り囲む観衆に軽やかに手を振って、そのたびに歓声が沸いた。



こっちを向いたときに一瞬見えた笑顔が、もう頭から離れなくて…。







…繭の笑顔が。







映画のワンシーンみたいじゃない?



…って、鼻で笑うな。






この感動、わからないかなぁ。



10年ぶりの再会だよ。



夢に見ることはあっても、それが実現するなんて考えもしなかったんだ。



これは、すごいことなんだよ。



その瞬間はスローモーションだよ、ほんとに。






はぁー…。



あのときの気持ちは、言葉にできないな…。





< 48 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop